高齢者による交通事故が報道されるたびに、「免許返納すべき」といった声が大きくなります。
たしかに、年齢とともに身体能力や判断力は落ちていくもの。安全のために返納を促すことは、ある意味では正しい選択です。
でも、私はずっと気になっていることがあります。
それは、「運転をやめたことで、高齢者が元気を失ってしまうのではないか」ということです。
実際に、私の親も79歳で免許を返納してから外出が減り、以前よりも気力が落ちてきたように感じています。
今回は、運転をやめることと高齢者の認知機能との関係について、研究や報道も踏まえて考えてみたいと思います。
運転とは、移動以上の“脳トレ”だったのかもしれない
車を運転するという行為は、思っている以上に多くの脳の機能を使います。
たとえば、目的地までのルートを考えたり、信号や標識を見ながら周囲の状況を判断したり、咄嗟の判断を下したり…。これはまさに「総合的な“脳トレ”」です。
私の親も長年、日常的に運転をしていましたが、免許を返納してからは「今日はどこにも行かない」という日が増え、趣味の園芸や買い物も億劫に。
こうした日々の変化が、心の張りや脳の活性にも影響しているのではないかと感じています。
研究が示す「返納のあと」の暮らし
2024年4月に内閣府が公表した報告書によると、免許を返納した高齢者の多くが、「外出機会が減った」「生活に不便を感じるようになった」と答えています。
一部には、「返納したあと気持ちがふさぎ込んだ」「社会とのつながりが減った」と感じる人もいるそうです。
さらに、国立長寿医療研究センターが進める「GOLDプロジェクト」では、「移動・運動・社会参加」が高齢期の健康を支える3本柱であるとされ、運転をやめたあともそれらを維持する仕組みが必要だと提言されています。
🔗 GOLDプロジェクト公式サイト
事故の原因は「年齢」だけではなく「薬の副作用」?
近年注目されているのが、「多剤併用(ポリファーマシー)」による高齢者の事故リスクです。
2025年6月のYahoo!ニュースによると、高齢者が複数の病気のために5種類以上の薬を服用しているケースでは、副作用や薬の相互作用で「意識障害」や「判断力の低下」が起きやすくなるという報道がありました。
🔗 Yahoo!ニュース記事(2025年6月)
つまり、「高齢だから危ない」だけでなく、薬の調整や服薬管理のあり方にも目を向ける必要があるということです。
「やめる」ではなく「支える」発想へ
私がこの記事で一番伝えたいのは、「運転をやめることを急がせるのではなく、“安全に続ける方法”を考えることも大切」ということです。
高齢者が安心して車に乗り続けるためには、
- 運転補助機能のついた車(自動ブレーキ、誤発進防止など)
- 定期的な運転技能チェック(簡易な認知機能テストも含む)
- 地域の送迎サービスや自動運転バス
- 薬剤師や医師による服薬の見直し
など、社会全体で高齢者の「移動の自由」を守る仕組みづくりが必要です。
まとめ
免許返納を否定しているわけではありません。
でも、返納したあとの暮らしに「孤立」や「意欲の低下」があるのなら、それは“本当に守りたかったもの”から遠ざかってしまっているのかもしれません。
私たちが目指すべきは、「高齢者が事故を起こさない社会」ではなく、
「高齢者が安全に、自分らしく、生き生きと暮らし続けられる社会」なのだと思います。
あなたのご家族や周囲の人は、免許返納についてどう考えていますか?
「返納する・しない」ではなく、「これからどう暮らしていくか」を一緒に考える時間をつくることこそが大事なことなのかなと思います。


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