6月21日は「ALSの日」です。
ALSという病気の名前を、みなさんはどこで知りましたか?
もしかすると、多くの方が最初に関心を持ったきっかけは、**漫画『宇宙兄弟』**かもしれません。私もその一人でした。
『宇宙兄弟』が教えてくれたALSという病気
『宇宙兄弟』の登場人物、せりかの父親はALS(筋萎縮性側索硬化症)という病気で亡くなっています。せりかは父を救えなかった悔しさから、「ALSの新薬を開発したい」という強い思いで、宇宙飛行士になります。
また、物語を語るうえで欠かせない存在である天文学者シャロンも、のちにALSを発症します。
子どものころのムッタにシャロンが贈った言葉、
「It’s a piece of cake!(楽勝よ)」
そして、病気を患ったシャロンに、今度はムッタがこの言葉を贈る——。
そのシーンは、希望の光のように心に残っています。
ALSとはどんな病気?
ALSは、脳や脊髄の運動神経が徐々に障害されていき、全身の筋力が低下していく進行性の難病です。
特徴は、意識や感覚ははっきりしているのに、体を動かすことが難しくなっていくこと。
やがて呼吸や嚥下も困難になり、人工呼吸器が必要になることもあります。
・最も発症しやすい年齢は60〜70代
・発症からの平均余命は2〜5年(個人差あり)
・治療法は確立されておらず、原因もすべてがわかっているわけではありません
イギリスの理論物理学者、スティーヴン・ホーキング博士がALSであったことでも知られています。
GT863という新薬候補に注目が集まっています
そんなALSに、もしかしたら未来の希望となるかもしれない新薬候補があります。
その名も 「GT863」。
この薬のすごいところ
GT863はもともと、アルツハイマー病の研究から生まれた化合物です。
ある研究者が、インド人にアルツハイマー病の発症率が少ないというデータに注目。インドのカレーに含まれる「クルクミン」という成分がヒントになりました。
クルクミンは脳の中にある「アミロイドβ」や「タウ」と呼ばれる異常タンパク質の凝集を防ぐ作用があり、それをヒントに**「クルクミンの効果を持ちつつ、脳に届く薬」**を目指して作られたのがGT863です。
名前の由来もちょっとユニーク!
GT863の名前の意味、気になりませんか?
- GT:研究を行った会社「グリーン・テック」の略
- 863:開発者・佐藤八郎(ハチ・ロウ・サン)さんにちなみ、「863番目」に出来あがった(本当は859番目だったそうですが、ハチ・ロウ・サンにしたそうです)
「高級車みたいでカッコイイ名前にしたかった」と語る佐藤さん。
情熱を感じるエピソードですね。
ALSへの効果も期待される理由
ALSの中には、SOD1というタンパク質の異常凝集が原因の一部だと考えられている「家族性ALS」があります。
このSOD1の凝集をGT863が抑える効果があるのでは?と注目され、ALSモデルマウスで実験が始まりました。
実験の結果:
- 運動機能の低下が抑えられた
- 脊髄の神経細胞の死滅も減少
- SOD1の異常な凝集が抑えられた
つまり、ALSの進行を遅らせる効果が期待できるという希望のデータが出てきたのです。
GT863が切り開く未来の治療
ALS以外にも、プリオン病やアルツハイマー型認知症など、タンパク質の異常凝集が原因の病気への応用も期待されています。
現在、GT863は2年間の開発研究を経て、臨床試験に進む準備がされています。
実用化は2033〜2035年ごろと見込まれていますが、錠剤で服用でき、価格も1年あたり50万円程度と現行薬に比べてかなり手頃。
「誰でも使いやすい」薬として、患者さんや家族の負担も軽減できる未来が描かれています。
ALSの日に、私たちができること
ALSという病気を、私たちは決して「特別な誰かの話」として見るのではなく、身近な病気の1つとして知ることから始められます。
『宇宙兄弟』の中で、せりかが抱いた思い。
ムッタがシャロンに伝えた言葉、「It’s a piece of cake!」
今、科学者たちがその未来を現実のものにしようと、懸命に動いています。
ALSの患者さんと、その家族の未来が少しでも希望に満ちたものでありますように。
GT863の研究が、世界を変える「一歩」になりますように。
📌 出典:プレジデントオンライン/なぜインド人は認知症になりにくいのか?認知症研究の第一人者が注目した「意外な食べ物」とは?


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